



警 官
「警部こちらです!」

森 昇
「レイプ博士か……
やってくれるな」

森 昇
「性犯罪の事後が
なんとも生々しい」

森 昇
「早急に北宇治高校の
黄前久美子に連絡だ」
黄前(おうまえ) 久美子

北宇治高校の1年生で、吹奏楽部
に所属。小学4年から楽器ユーフ
ォニアムを担当している
どちらかといえばドライで割り切
った現代っ子
思ったことをすぐ口にしてしまい
相手とトラブルになることも

久美子
「うわぁ、高校に入ったら胸が大
きくなるなんてウワサ、どうして
信じちゃったんだろ(Bカップ)」
高坂 麗奈

久美子のクラスメイト
クール&ミステリアスな印象が
あり、吹奏楽部でトランペット
を吹いている


久美子
ずいぶん困った悩みなんだけど
あたしは同級生の高坂麗奈から
求愛を受けている
そう女の子から恋の告白なのだ

久美子
最初はタチの悪い冗談だと相手に
しなかったけれど、どうやらこれ
マジ恋らしいんだな

久美子
あたしはオンナを恋愛対象にする
ことはなかったし、これからも
ノーマルであると思っていた

久美子
そりゃあ、抵抗しましたよ
かなり拒否したと思います

久美子
けれども、あたしにも事情があり
まして、なんだか特別な能力を持
っているみたいなんだ、あたし
楽器ユーフォニアムを演奏するこ
とで勘が働くようになる
普通の人では気づけない何かが
イメージとして見えくるのだ
カンが鋭くなるっていうのかな
警察の組織に協力するかたちで
「少年少女探偵団」のリーダー
をまかされている

久美子
その反動で性欲の抑えがきかなく
なり、厭らしいエロスが溢れ出る
ことを拒めなくなる

久美子
白昼の学校から性欲に悶え苦しむ
女学生がいるとしたらどうだろう

久美子
大概は妄想でなんとか回避してい
るが、いつまで自戒できるか自信
はない



久美子
一人寂しくユーフォニアムを
夜のお供にしたものだ


久美子
そこを救ってくれたのが!

久美子
あたしの運命の女(ヒト)
高坂麗奈チャンであった

麗 奈
「久美子のスカートの中身が
気になるんだけど」

久美子
「そんなめっそうもない
あたしのパンツなんて
ただの布切れで・・・・・・!」

久美子
「あ~ん、麗奈、待ってよ
スカート返しなさいよ!」

久美子
「どうすればおっぱいが
大きくなるのか教えて」

麗 奈
「いっぱい揉むのよ
わたしにまかせて
リラックスして」
久美子
「はわわわっ!」

久美子
こうして悪ノリしているうちに
後戻りできないイケナイ関係に
なってしまい

久美子
相思相愛の恋人にいたるのが
黄前久美子と高坂麗奈である

【18禁・ガールズラブ】
【響け! ユーフォニアム】
時をかける青春
~放課後はユリの匂い~
音楽は少女たちを駆け抜ける
二人の頬を桜色に染めながら






吹奏楽部員
「黄前~っ、おまえに
お客さん来てるって
応接室にいるそうだ」
久美子
「あたしに・・・・・・?
ついに人気者の仲間入りです
かね」

麗 奈
(不機嫌そうに廊下を歩いてくる)

久美子
「おや、麗奈ったら
なんとも機嫌悪そうに!
ここは恋人のアツい抱擁で
元気にさせてあげなきゃね」

久美子
「レ・イ・ナ 好きよ💛」
麗 奈
「久~美~子──っ!」

麗 奈
「うがぁ~~っ!!
なんでよ、なんでよ」

麗 奈
「練習~っ、演奏~っ!
ユーフォの猛特訓」

麗 奈
「課題曲はやくこなして!
パート練習しっかりやって!
私、ずいぶん先行ってるよ」

久美子
「もう麗奈ったら最悪!」
久美子
「失礼しま~す、って
えるじゃない!
どうしたの!?
団員同士は機密柄、人前で会わ
ないのがルールじゃない」
千反田(ちたんだ)える

好奇心旺盛 キラキラ瞳の高校生
久美子と同じ「少年少女探偵団」
に所属してNo.2の解析能力をも
っている

える
「特例ですよ、森 団長から緊急
事態だから、久美子先輩と近
しい距離にいろって」

久美子
「レイプ博士が姿を消して連絡を
絶って時間経つよね?」

え る
「その逆ですよ、森 団長が久美
子先輩に情報を流していない
だけで、レイプ博士によるレ
イプ犯罪は増加しています」

久美子
「うわっ」



え る
「マスコミは警視庁への挑戦だな
んて煽りだして、森団長や団員
の思惑をすでに超えています」


久美子
「犯罪で使われる匿名通話やメー
ル予告の発信元が特定できない
って説明あったけど──犯罪史
上例のない雲を掴むようなケー
スだって」

え る
「そこで質問します
かなりきわどい内容なので
怒らないで答えてください」

久美子
「何よ、急に改まって」

え る
「久美子先輩って処女ですか?」

久美子
「えーっ!? そこ聞いちゃう」

え る
「わたし達がレイプ博士のターゲ
ットになりうる可能性もありま
す」

え る
「調査によると被害者の女性は性
交渉の経験が多く、処女はいま
せんでした」

久美子
「!!」

え る
「わたしは処女ですよ
大切なモノは森 団長のために
とってあるんです」

森 昇
「Z z z……Z z z……」

久美子
「ふ──ん」

え る
「今度は久美子先輩の番ですよ
処女ですか? 非処女ですか?」

久美子
「先出しじゃんけんには
勝てないわね」

久美子
「恋人はいるわよ・・・・・・いるけど
あたし達って高校生だしさ」

久美子
「純白な清い関係なの
あはははは~~っ!」

久美子
えるにあたしが同性愛者だなんて
バレたらややこしくなりそう

え る
「わたし、素敵だと思います!
久美子先輩がバージンを貫いて
いるだなんて」

久美子
「ちょっ……声が大きいっ
部屋の外に誰かいたら!」

え る
「それがなんだって言うんですか
貞操観念ある大和撫子がここに
いるって素晴らしいことじゃあ
りませんか!」

麗 奈
「…………」

久美子
あちゃー、そっち行っちゃったか

麗 奈
「黄前久美子、処女決定っと」

久美子
「まあ落ち着きなって
少年少女探偵団は警察をサポー
トするのが役目だし、捜査現場
には行けないから危険なことは
ないはず」

久美子
「あたし達、花の女子高生よ
もっと青春を謳歌しなきゃ」

える
「恋人といちゃいちゃする
のもアリですよね」

久美子
「わざわざありがとう
森 団長にあたしは大丈夫だっ
て伝えておいて」

え る
「必ず犯人を逮捕しましょうね」

久美子
「あたしとしたことが
おのろけに走ってしまったわ
変にこそこそしたくないし
これでよかったかもね」

久美子
「さぁて捜査再開、じゃなかった
全国めざして練習しますか」

麗 奈
「…………」


久美子
「あんたさ、おばさんになっても
この仕事つづけるワケ?」

久美子
「なんの科学的根拠があるわけで
もなく、勘が当たって犯人逮捕
だなんて、人をバカにしている
わよ」

え る
「人にはそれぞれ役割があると思
うんです」

え る
「それがどんな能力であれ、人か
ら当てにされ頼りにされるなら
こんなうれしいことはない」

え る
「こんな返答でよろしいですか」

久美子
「える、あんた立派になったね
あたし人生で一番感銘受けた」

久美子
「あたしはユーフォの練習でえる
をサポートするから
有力なイメージが浮かんだら連
絡するね」

え る
「お願いします」

え る
「この辺りを感覚だと捉えたんだ
けど……現場経験のないわたし
では頼りないです」

え る
「おそらくここね、セキュリティ
ーロックを解除する、と」

える
「しかしさきほどの久美子先輩は
驚いてましたね
昨日観たドラマのセリフを言っ
てみただけなんですけど」

え る
「少年少女探偵団 No.2
千反田える 只今参上!」

え る
「初陣となりますが
助けに参りました」

え る
「!!! っ」

え る
「一足遅かったか! ちぇっ」



久美子
「麗奈と二人っきり」

久美子
「空がゆっくり動いている」

久美子
「疲れたぁ~、帰ろ、帰ろ!
コンクール近いし練習で
まいっちゃう」

久美子
「コンビニ寄ってく?
アイスでも食べようか」

久美子
「顧問の平山先生が緊急入院して
臨時の講師に変わってからとい
うものハンパない練習量で学業
もおろそかに」

久美子
「ひゃうっ!? ちょっと……!
いきなりナニしてんのよ
ま、待って・・・・・・麗奈」
麗 奈
「私が久美子を気持ちよくして
あげる」

久美子
「さすがにここじゃマズいって
誰かに見られちゃう……
恥ずかしいよ!」

久美子
「気持ちよくなんていいから
……麗奈、いやいや
あ、ダメっ……そこは!」
麗 奈
「誘惑してきた久美子が悪い」
久美子
「もう・・・・・・麗奈ってば あっ
胸っ……さわっちゃ ダメぇ」
麗 奈
「だいじょうぶ・・・・・・
ゆっくり優しくしてあげる」

麗 奈
「久美子、声 出ちゃってるよ」
久美子
「ふぇ、だって気持ちいいから」
麗 奈
「かわいいわね、オッケー
足をもっと広げてみて」
久美子
「やあ…んんっ、あっ あん」

久美子
「わかったから!
い、一回だけなら好きにして
いいよ」

麗 奈
「久美子ったら──
わたしの一回が長いこと
知ってるくせに」

久美子
「誰もいない……
どうしてこんなに
ドキドキしてるんだろう」

久美子
「この教室で放課後のレッスンが
始まるわけね」

久美子
「あたしからのお願い!
セーラー服を脱がさないで」


久美子
「ふぅ~、サッパリした」
久美子の母親
「久美子、シャワー使ったの?」

久美子
「どちらがご主人様なのか
思い知らせてやったわ」

吹奏楽部員
「久美子、またお客さん
来てるわよ」
久美子
「ありがとう」

久美子
「える、でかしたわ!
レイプ博士について何か重要な
手がかりを掴んだのね」

久美子
「少年少女探偵団のリーダーは黄
前久美子ですが、ほかにも有能
なメンバーはいるのです」

え る
「ご想像通り、犯人逮捕の時間が
やってまいりました」

久美子
「え~と、なになに──
レイプ博士は宇宙人である
捜査終了 by える」

久美子
「レイプ博士の正体は宇宙人
なんですかっ!?」

える
「そうです、わたしの目の前で
消えたんですから宇宙人の
仕業にきまっています」

久美子
「しっかりしてよ!
頭イカれてるんじゃないの」

え る
「いいえ! あれは火星人でした
もしくは木星人か見間違いなら
土星人になります」

久美子
「太陽系から1ミリも
出てないんですけど」

え る
「わたしの捜査解析に
ご不満でも?」

久美子
「はぁ──
モリモリに期待して損した」

久美子
「あたしの経験上、レイプ博士は
ごく近くの人物だと思うわ
あまりにも内情に通じている

久美子
「そしてレイプ犯罪を周知させる
ことで間接的なメッセージを発
信していると思われる」

久美子
「レイプ博士は、あたし達に何か
を諭したがっているのよ」

え る
「それで……犯人は誰ですか?」

久美子
「それが分かるんなら
警察いらねえだろ!」

え る
「黄前久美子もまだまだですね」

久美子
「この際だから喋らせて──
最近のあたしおかしいの・・・・・・
もう感覚が鈍くなってユーフォ
をいじっても何も感じない」

久美子
「じつは能力なんかとっくに消え
ていて、それを認めたくなくて
ユーフォニアムを抱いている」

久美子
「こんな弱気なチームリーダー
ダメだよね
でも元々いらない能力がなくな
ったんなら、それもいいかな」

える
「ラッキー!! 千反田えるが
主役デビューしちゃいます」

久美子
「えるさ~ん、ここは感傷的な
シーンで共演者の涙をさそう
演出が期待されるべきでは」

え る
「きっと卒業の時期がやって来た
んですよ、久美子先輩」

え る
「森 団長によると思春期に
感覚能力を喪失する者もいる」

え る
「それは悲しいことではなく
精神の成長を喜ぶべきだと」

え る
「久美子先輩抜きで
少年少女探偵団はありえません
いよいよ最後の日がやってきた
のですね」

久美子
「なにが少年少女探偵団よ!
あたしもう高校生ですけど」

え る
「それは言わない約束ですよ」

久美子
「悠長なこと言ってらんない」

久美子
急がなきゃ! あたしが──
あたしがなんとかしなくちゃ

麗 奈
「久美子、もう練習終わり?」

久美子
び く う !

麗 奈
「最近の久美子おかしいよ」

久美子
「ごめん……
今は吹奏楽のことまで
頭が回らなくて」

麗 奈
「少々浮ついてるんじゃないの
黄前久美子さーん」

久美子
「わかってる
わかってるから!」

麗 奈
「久美子と一緒に演奏すること
全国大会出場が、私の夢なの」
久美子
「はいはい、どうせあたしはヘタ
ですよ~だっ、さいなら!」

久美子
「ふあ~あ、どうですかねえ~
ユーフォニアムは才能なし!
捜査は難航、特殊能力も喪失
高校生にして失職したかも」

久美子
「ほんと、どうなるんだろ」


森 昇
「────」

団員たち
「長い間お世話になりました」

森 昇
「今まで無理言ってすまなかった
警視庁から少年少女探偵団は任
を解かれ、抹消されることが決
まった」

森 昇
「君たちとの職務は二度とないだ
ろう、僕も地方職員として再ス
タートだ」

森 昇
「とは言っても完全消失まで
多少の時間はある」

森 昇
「最後まで団員としての役割を
全うしてほしい」

団員たち
「はいっ!!」


森 昇
「高坂 麗奈さんですか?
レイプ博士について有力な情報
があるとのことですが──」

麗 奈
「私がレイプ博士なんです」


久美子
「えるのマネしてレイプ博士の
誘いにのってはみたけれど」

久美子
「もしも~し、どうやってあたし
の電話番号がわかったんですか
これって犯罪ですよ、逮捕しち
ゃいますよ~」
レイプ博士
「明日11時に寺前町3丁目の
境内に来い
ショッキングな体験ができる
ぞ」

久美子
「あ────」




久美子
「その女の子の記憶は
なくなっていたのよ」

え る
「記憶のない少女
気になりますね」

久美子
「レイプ博士による被害者は
前後不覚に陥ってしまう」

え る
「リンゴも柿も
木に成ります」

久美子
「謎が謎を呼ぶ怪事件とは
まさにこのことね」

え る
「ふむふむ、なるほど
気になる、木に成る」

久美子
「ちょっと~
える、やる気あんの?」

え る
「ファイトーッ!」

久美子
「ええとその──」

久美子
「がんばる」

麗 奈
「ちょっといいかしら」

麗 奈
「吹奏楽の練習時間は
もう始まってるから」


える
「う~ん、う~~ん
あ、わかったーっ! 犯人」

森 昇
「おっ、える!
今日は絶好調じゃないか」

え る
「森 団長! それは愛しい人が
いつもそばにいるからですよ
きっと!」

森 昇
「愛しい人か! そんな流行歌が
昔あったよなぁ
あの頃の歌謡曲には人々を虜に
させる魅力があったからな」

え る
「森 団長は恋愛関連の話題には
うといですよね
殺意が湧く程度にはセンスを感
じますよ」

森 昇
「それでは、お茶にしよう!」

森 昇
「だが待てよ ──
レイプ博士から届いた荷物も
気にはなるな」

森 昇
「える、箱の中身はなんだい?」

え る
「そうですね、言ってしまえば」

え る
「わりと過激な女の子です」

え る
「見ちゃダメーっ!
森団長には刺激が強すぎる」

森 昇
「赤い風船飛んだ~♪
屋根まで飛んだ~♪
屋根まで飛んで~♪
壊れて割れたぁ~♪」


え る
「レイプ博士、絶対許せません!
新妻のいる事務所まで他所の女
を送りつけてくるなんて非常識
きわまりないです」

え る
「このえる特製の解析ノートを
提供しますから、犯人を即刻
逮捕しちゃってください」

え る
「レイプ博士の目星はついて
いるんですよね、先輩」

久美子
「ふふん!
あたしを誰だと思っているの」

麗 奈
「じ────っ」

久美子
「う~ぅ、麗奈すまん
あいつは千反田える──
話せば長くなるが、えるは生き
別れ系で妹属性を持ったセーラ
ー美少女なのだ」

麗 奈
「はいはい、わかった」

麗 奈
「もう、あんたって子は!」

麗 奈
「さあ、反省しなさい
下手クソでサボってばかりの
ダメ部員さん」

久美子
「麗奈・・・・・・ごめん
ちょっと外すね」

麗 奈
「私は久美子の分まで頑張って
伝説のトランぺッターになる
んだから」

麗 奈
「────」

麗 奈
「──っく!!
麗奈の・・・・・・高坂 麗奈の」

麗 奈
「バ カ ぁ ── ッ !!」





え る
「もう! 解析 解析って
これ以上どんな方法があるって
言うんですか!?」

え る
「お家に帰ってゆっくりTVドラ
マが観たいです
傍にはお茶菓子と緑茶が一緒に
ですよ」

久美子
「えっ!? そんなまさか!」

久美子
「噓でしょ!? 分かったけど
──レイプ博士が誰なのか」

麗 奈
「────」

久美子
「はあはあ、はぁはぁ」


久美子
「団長、分かりました!
レイプ博士が誰なのか」

森 昇
「おかえり、黄前久美子 ──
さあ、いつものように事件の
鋭い洞察をきかせてください」

え る
「久美子先輩っ!!」

久美子
「レイプ博士は同級生の
高坂 麗奈です」

久美子
「今まで何者かによって私の解析
能力は遮断されていました」

久美子
「が、さきほど妨害が解かれて
事件のイメージが構築しだし
犯人像が浮かびました 」

久美子
「でも、実犯人は麗奈ではなく」

久美子
「きっと誰かに悪事に利用されて
いるだけだと思います」

久美子
「団長の意見をきかせてください」

森 昇
「高坂 麗奈を検挙する」

え る
「む~~~ん」

森 昇
「なんとかなる、なんて思って
いないよな」

森 昇
「黄前久美子のジャッジなら
それで確定だろう」

森 昇
「帰る場所なんかない
ここが我々の住処だ」

森 昇
「おまえだって、麗奈を捕獲
したくてここへ来たはずだ」

森 昇
「飯田、長瀬を呼び戻せ!
少年少女探偵団 集結だ」

森 昇
「聞こえないのか!
総力戦の開始だよ」

え る
「あーん、もう情けないなぁ」

え る
「久美子先輩の怯えっぷり」

え る
「森 団長の焦りと苛立ち」

え る
「千反田えるが二人まとめて
面倒みましょう!」

久美子
「すぅー、 すぅー」

女の子
「助けて、助けて」

久美子
「あなた誰なの?
えるの身に危険が迫っている
って ──
あっ、通話を切らないで!」

久美子
「こんな時にはユーフォニアム
備えあれば憂いなし
あたしの演奏を聴けェー !」

久美子の母親
「どうしちゃったの久美子!?
騒音よッ! 近所迷惑よッ!」

飯田 団員
「森 団長、高坂 麗奈から
電話が入っております!」


え る
「こんばんは
市街地まで出張ってます」

え る
「高坂 麗奈、近くにいますね!
麗奈の臭いがプンプンします」

麗 奈
「千反田えるさんですか?
こんばんは、麗奈です 」

え る
「あ、麗奈さん、はじめまして!
いつも久美子先輩が
お世話になってます」

え る
「今日は麗奈さんと友達に
なれたらうれしいなって
ここまで来てみたんです」

麗 奈
「私は絶対に嫌です!
えるとは友達になれません!」

麗 奈
「! ! ! っ」


久美子
「えるったら、無茶しすぎ!」

久美子
「ユーフォニアムのお告げに
よると・・・・・・」

久美子
「きっと、ここよね}


久美子
「お邪魔しま~す」

久美子
「誰もいてほしくはない」

久美子
「けれど、無理なんだよね」

久美子
「千反田えるさ~ん
いましたら返事をして~」


久美子
「 ─── 」

え る
「団長にこんな姿を見られては
私、もうお嫁に行けません」

森 昇
「長瀬 団員、えるに何か着る
物をあしらってほしい」

久美子
「ええと、その・・・・・・
森 団長ですよね?」

森 昇
「やがてここに来る
麗奈に言ってくれ」

森 昇
「未来はまかせた」


久美子
「へへ~ん! そっかぁ~」

久美子
「これはショータイムなんだ」

久美子
「麗奈は何もかも理解した上で
あたしをからかっているんだ」

久美子
「本気になって馬鹿みたい!」

久美子
「こんなことならアリスの国の
ドレス持ってくればよかった」

久美子
「あせらないで待ってて
順番に脱衣してるのよ」

久美子
「コスプレえっち大好き
だからねぇ~、麗奈は」

久美子
「こっちへおいでよ」

久美子
「黄前久美子ちゃんなら
ここにいますからね!」

久美子
「麗奈から着信ばかり」

久美子
麗奈、近くにいるんでしょ
あたしにはわかるよ
吹奏楽の練習をエスケープした
あたしを捕まえに、鬼婆の角を
生やしてやって来るんだ

久美子
事件の顛末は拍子抜けだったけど
帰り道には温かいココアを飲んで
くつろいだ後には笑い飛ばそう!
徹夜でユーフォニアムの猛特訓に
つきあってあげてもいいんだよ?

玄関ドアの開く音
「ガチャ・・・・・・」

久美子
「麗奈いるんでしょ
出てきなさいよ!」

麗 奈
「見つかっちゃった!」

久美子
あたし達はマンションを抜けて
高野山の山頂をめざしている
静寂の中、二人の足音が聞こえた

久美子
「麗奈、自首しようよ
あたし、罪が軽減できるなら
どんなサポートでもするから」

麗 奈
「高野山からの夜景もこれが最後
かと思うと胸苦しくなるわね」

久美子
「麗奈、何言ってるの?
つまらない冗談やめて」

麗 奈
「私ね、未来からやってきたの」


麗 奈
「私たちの時代、ウイルス感染で
男は全員死滅する
卵巣を精巣に性転換させ、女を
雄に作り変える必要があった」

麗 奈
「人類の存亡を賭けた時間移動は
触媒カプセルを望んだスケール
まで吸引させて完成したわ」

麗 奈
「この時代にあるいくつかの原料
鉱石、植物、そしてユーフォニ
アム楽器がほしかったの」

麗 奈
「私は生命の仕組みを変えて
オスのスイッチをつくった
未来人なの」

久美子
「知らないよ
未来なんてわからないよ」

麗 奈
「ねえ、夏祭りの花火大会のこと
おぼえてる?」


久美子
「うん、おぼえてるよ
あたしが浴衣を着ることに慣れ
ていなくて、10分遅刻したら
案の定、麗奈は怒っていて」

久美子
「となり空いてますか?」
麗 奈
「どうぞ良しなに」

麗 奈
「冷た、つぅ── 」
久美子
「あははっ
あわてて食べるからだよ
きゃ──っ」

久美子
「うわー、キレイですねぇ」
麗 奈
「────」

久美子
「やだっ!!!
ファーストキス・・・・・・」


久美子
「もういいわ、勝手にすれば?」

久美子
「あたしはルールブックを
持っているのよ」

久美子
「誰もあたしを束縛する
ことなんてできない」

久美子
「あたしは自由に生きる
って決めているから!」

久美子
「麗奈の未来での悩み事
ちゃっちゃと解決してきなよ」

麗 奈
「それでこそ久美子ね
惚れ直しちゃった 」

久美子
「やっぱ、ごめん
なんか言い過ぎた」

麗奈
「笑ってよ、久美子
あなたが悲しい顔をすると
私は胸が痛くなる
大丈夫、すぐ帰ってくる
久美子が泣き出すまえに
必ず戻ってくるから」

久美子
「これで終わりだなんて嘘だよね
ポイ捨てされて御仕舞いって!」

久美子
「すぐに帰ってきてよ
ずっと──
ずっと待ってるんだから!」

「 プシュン 」

久美子
いままでのこと忘れない
麗奈のこと──
絶対忘れないからね!

麗奈のことを思い出すなら
ユーフォの練習をするんだ

麗奈がびっくりするくらい
上手い演奏ができるように

いつか願いが叶うって
信じていいんだよね!?

その指、息の強さとタイミング
求めている音はちゃんと頭で鳴っ
ているのに、実際にその音が出な
いもどかしさ

久美子
「はん! やってらんないわ!
あたしって何してるんだろ」

こんなの無茶苦茶じゃない
ユーフォが上手くなったって
何がどうなるって言うのよ!

あたしのユーフォを褒めてくれる
麗奈はもうここにはいないのに!

なんなの……
ほんと、なんなのよ!
麗奈にとってあたしは
なんだったのよ!?

麗 奈
「トランペットなら誰よりも
私がうまく演奏できます」

あたしをこんな嫌な
苦しい気持ちにさせて

迎えに来てくれるって
信じてたのに捨てられた

すぐ帰ってくるっていつのことよ
わたしには理解できないわ
今すぐここに来て説明してよ!!

ねえ、どうして私に会いに来たの
ユーフォニアムがほしいだけなら
勝手に持って行けばよかったじゃ
ない

麗奈、きいてほしいの!
ユーフォをうまく吹きたい
あたしだって本当は
もっとうまく吹きたかったのよ!

深い表現力と
心のこもった演奏

うつくしい音色
どこまでも響いていきそう

麗奈、ずっとずっと
一緒にいられると思っていた
そばにいてくれると思っていた
一生好きでいられると思っていた

久美子
「麗奈、帰ってきてよぉ~
麗 奈 ぁ~、そばにいて
あたしから離れないで」

久美子
「麗奈がいい、麗奈がいいの~
一人ぼっちは寂しいよぉ! 」

あの頃のあたし
麗奈がそばにいることで
甘えていた
でも麗奈といることが
すごく楽しかった
喧嘩なんかしないで
もっといっぱいお喋りしておけば
もっと麗奈の笑顔を見ておけば
よかった
楽しい思い出をつくっておけば
よかったのかな

まだ足りない!
こんなユウフォじゃ
全然足りない!
麗奈には届きゃしないんだ



もう一度
あの頃に戻れるなら
絶対に引き留めていたのに
今、一緒に吹きたかったのに

ちゃんと思い通りにできたか
分からない

気後れして一緒に吹きたくない
そういう時期があったけど
思いっきり二人で演奏してみたい

もう迷わない、後悔なんてない

私、ユーフォニアムが好きだ ──

麗奈、元気でやってますか?
よくぞ
ここまで続けてきました
聴きにおいでよ
あたしの隣の席は
まであけてあるからね
麗奈のくれた課題曲
楽譜がなくてもふけるくらい
はやく次の曲を教えてくれないと
自分で勝手に決めちゃうぞ

麗奈・・・・・・
あたしたち離れていても
ずっと一緒なんだよね



麗奈に感謝の気持ち伝わった?

あたし楽器を通して
人に優しくなれた気がするの

麗奈が言ってくれないから
自分で言っちゃうよ
あたし格好いいでしょ?


麗 奈
「全国大会行こうね!」

久美子
「── うん!」

関西大会、全国大会
終わっても待ってるからね
ずっと待ってるから……
帰ってきてよ、麗奈






こうして時は流れ
あたしは北宇治高校を卒業した

20年 後
麗奈は未来の地球を
救えただろうか
元気で、そして幸せに
やっているだろうか
そうであってほしい

もしやり直せるとしたら……
麗奈は必要なかったことになる

もし意味をもたせてくるとしたなら
黄前久美子のその後の生き方でしか
ないと思う
正解というものはない


これが私の青春の1ページ・・・・・・
それにしても
20年も人を待たせるなんて
なんて身勝手な女の子だろう
未来から来たトランぺッター
高坂 麗奈 ──
時代は新しい世代とともに



『 響け! ユーフォニアム 』
未来から来たトランぺッター
最後までおつきあい
ありがとうございました
けい太

久美子
「感想きかせてください」
麗 奈
「京アニはアニメーションで
世界に挑戦をつづけます!」

え る
「主演女優賞いただきました」
終わり
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